「疲れた……」


事務所を出て、エレベーターの壁に体を預けながら、そう呟く。

なんだかいつもの、やりきった疲れではなく、妙な疲れ。

スッキリしない。


重たい足取りでガラス張りの大きなエントランスをくぐり、少し離れた場所にある公園に向かう。

辺りはもう真っ暗で、もちろん誰もいない。

人通りも少ない道沿いにある公園のせいか、シンと静まり返ている。

なんだか家に帰って1人になるのが嫌で、適当に近くにあった公園で時間を潰す事にした。


重たい足を引きづりながら、ベンチに腰掛ける。

ドスンと腰を下ろして息を吐けば、真っ白な息が世界を覆った。


「はぁ~」


そして、人がいない事をいい事にカナリ大きめの溜息をついた。

そのまま辺りを見渡せば、綺麗に剪定された木々や草花が生い茂っていた。


「はぁ、落ち着く」


会社の近くには、緑が沢山植えられた小さな公園や広場がいくつかある。

昼はみんなそこでランチをしたりしているけど、夜は誰もいない。

煩い場所が苦手だから昼は来た事ないけど、夜は木々が少しだけライトアップされていて雰囲気がいい。


だから、疲れた時や悩んでいる時は、こうやって仕事が終わった後ここで自然のパワーをもらう。

元々田舎育ちな事もあるけど、こうやって自然に囲まれていると落ち着く。

私の一番の癒しスポットだ。


おまけに、今は早咲きの桜が咲いている。

ここ最近温かくなっていたから、例年より早いみたいだ。