やっぱりこの男、あなどれない。

適当そうな事言いながらも、その裏では常に頭を回転させてる。

そんな人。


「気持ちに蓋してなかった? 本当は好きなのに、ダメだってストッパーかけてなかった?」

「――」

「本当に好きなら、そんなストッパーなんてすぐ外れると思ってたけど――まんまと、外れたね」


ニヤリと笑ったその姿に、悔しくて何も言えない。

まんまと彼の思惑にはまってしまった。


悔しくて、残っていた飲み物を一気に喉に流し込む。

何か言い返してやりたいけど、何も言えない自分が更に腹正しい。

そんな事を思いながら、深い溜息を吐いた、その時。


「本当に好きなら、駆の事変えてあげてよ」


聞こえたのは、今まで聞いた事の無い様な、優しい声。

ハッと顔を上げると、どこか寂しそうに微笑む純さんがいた。