「煙草変えました？」


言ってから墓穴を掘ったと気づいた。

お互い『無かった事』にしていた事を掘り起こしてしまった。

煙草を吸っている所を見たのは、今日とあの日だけだから。


私の言葉を聞いて少し目を見開いた櫻井さん。

それでも、ああ。と言って何事も無かったかのように言葉を落とした。


「煙草吸う人？」

「いえ……」


昔は吸ってたけど。

女は吸うなって言われたから止めた。


普通の上司だと、当たり障りない会話ぐらいできるけど。

この櫻井駆は違う。

なんともやりづらい。


言葉に詰まって、微妙な沈黙が続いたが。

櫻井さんの帰るか。の一言でその場は解散になった。