無意識に上がる頬をマフラーで隠す。

すると、少し前を歩いていた櫻井さんが立ち止まって空を見上げた。


「すげー綺麗だな」

「え?」

「このイルミネーション」


そう言われて見上げた先には、青く光る木々が映った。

まるでトンネルのように世界を覆って、私達を照らしてくれる。


そんな一時さえも、キラキラと輝く。

今まで何とも思わなかったイルミネーションも、世界の端で聞こえるクリスマスソングも、世界を明るく照らす。

今まで何とも思わなかったモノが、特別なモノに思えた。

そして、一緒に過ごせている自分は特別なのかもと思ってしまう。


ううん。

特別になりたい。

そう思う、自分がいる。


ムクムクと大きくなる気持ちに焦ってしまう。

何か話している彼の言葉も、無意識にシャットダウンしてしまう。


これ以上、好きにならないと決めたはず。

だって、あの日のあの言葉が、まだ心に残っている。


『やめた』と言った、あの言葉。

あの言葉の意味を、私はまだ知っていない。

聞きたいけど、聞くのが怖い。

彼まで続く道を絶たれる事が怖い。