ふぅっと小さく溜息を吐いて、手持無沙汰だったから書こうと思い、店員が持ってきたペンを徐に取る。

ふと前を見ると、櫻井さんも書き始めていた。


カリカリとアンケートの内容に沿って書き進めていく。

最後の欄を埋めた所で小さく溜息を吐いて、前を向いた。


すると、櫻井さんも書き終えた様で、まだ残っていたコーヒーを飲んでいる。

その姿を一瞥した後、チラリとテーブルにある櫻井さんのアンケート用紙に目をやる。

だけどその時、1つの項目に目が留まる。


誕生日。

12月25日。


見えたその文字に、目を見開く。

うそ、と思って。


「櫻井さん、今日誕生日なんですか?」

「あ~、まぁ。そう」


私の驚きにも、たいして興味の無さそうな櫻井さん。

表情一つ変える事なく、コーヒーを口にした。

その、あまりのどうでもいい感に驚くけど、慌てて口を開いた。


「おめでとうございます」


ポロリと落ちた言葉。

あまりにも驚いたせいか、感情が籠っていたか分からない。