正直、無茶苦茶動揺してた。
だけど、それを悟られまいと平静を装う。
「クリスマスとか意識する人なんですか」
「しない。けどお前も飯まだだろ?」
「まだ、ですけど……」
「俺もまだ」
「ですよね」
彼らしい答え。
間違いなく、クリスマスだからとか一切考えていない。
ただ単に、お腹空いたから一緒に食うかという、深い意味のない誘い。
だけど、そんな事されたら女が喜ぶって、そろそろ分かってほしい。
一応クリスマスなんだからさ。
特別感出ちゃうじゃん。
「別にいいですけど」
「どうせ暇だろ」
「それ、すっごく失礼ですよ」
「なに、予定でもあんの」
「無いです。櫻井さんこそ、無いんですか」
「あったらもう帰ってるだろ」
「ですよね」
「ほら、さっさと行くぞ。こんな寒い場所で仕事できるわけねーだろ」
素っ気無くそう言われた言葉に笑ってしまう。
寂しい者同士、何か食べに行きますか。なんて強がって言葉を落とす。
だけど、口元に浮かぶ笑みは消す事は出来なかった。