好き。

久しぶりに生まれたこの感情に、自分でも驚いた。


恋とはするものではなく、堕ちるものだ。

そんな言葉をどこかで聞いたなと、ぼんやり思う。

あんなに自分自身の気持ちが分からずもがいていたのに、こんなにもアッサリと自分の気持ちに気づいた。

小さな言葉やキッカケで、簡単に心は傾いてしまった。


だけど、心の奥では分かっていたのかもしれない。

そう認めるのが怖かっただけで。

好きだと思わないように、目隠ししていただけで。


恋はしない。

そう決めたのに。

人間の感情なんて、コントロールできないものだ。

こうでありたいと思うのに、感情はそんなに単純なものではない。
 
特にこの感情は、きっと生まれてしまえば何もしなくても大きくなっていく。

自分自身の意図とは正反対に、大きくなっていく。


だけど、そんな中。

止められない事なんて頭では分かっているのに、止めようとしている自分がいる。

心にストッパーをかけて、逃げようとしている。



本当は、怖いんだ。

まだ人を好きになる事が――。