そう頭では分かっている。

分かっている。


だけど、あの人からは言われたくなかった。

そんな事、言われたくなかった。


「なんなのよっ」


泣きたくもないのに、涙が零れる。

悔しくて、上がる息の下でグイッと乱暴に涙を拭った。


そんな時、不意に手の中で紙がクシャリと音を立てた。

ゆっくりと掌を広げると、そこには綺麗な字で書かれた番号が浮かぶ。


「ご丁寧に書いてんじゃないわよ」


その文字を見た瞬間、再び涙が込み上げる。

動いていた足もいつの間にか止まって、誰もいない歩道に1人佇んでいた。

その瞬間、自分が酷く惨めに見えて笑えてくる。

思わず自嘲気に笑って、クシャリと紙を握りつぶした。


「一番馬鹿なのは、私か……」


これは自分へのしっぺ返し。

自分がした事への罰なんだろう。

そう思って、泣いた。