放心状態の私を置いて、部長がツラツラと何か話している。
そんな声も全く頭の中に入っていかず、ポカンと口を開けたまま固まる。
そのうち、新主任の紹介が終わり、ゆっくりと会議室から人が抜けていく。
徐々に、さっきまで見えなかった新主任の姿が徐々に見えてくる。
もちろん美咲も気づいたみたいで、信じられない。と言わんばかりの顔をして固まっている。
前に立っている、部長と遠藤主任と……その人。
さくらい、かける。
――櫻井、主任。
その姿はあの日見た姿と同じで、完璧なまでにスーツを着こなしている。
眩暈がしそうだった。
予想もしなかった展開に、言葉が落ちない。
だって、つい先週居酒屋で見た顔がそこにある。
呆然とする私達を置いて、そのうちゾロゾロと前の出口から出ていく部長達。
でも、ふとこっちを見て僅かに驚いた顔をした彼。
それでも、何事も無かったように再び部長達と話しながら部屋を後にした。
残されたのは、呆然と立ちすくむ私と美咲だけだった――。