その強い眼差しに、逃げ出したくなる。

何もかも見透かされている気がして、逃げ出したくなる。

耐えきれずに視線を伏せた私を逃がしまいと、グイッと腕を引かれて向き合う形になる。

そして、変わらず視線を外す私の顔を覗き込んで、櫻井さんは口を開いた。


「全部吐き出せ」

「――っ」

「思ってること、全部。聞くから」


真っ直ぐに私を見てもて、そう言う櫻井さん。

曇りない真っ直ぐな瞳が、私の心を見透かしている様だった。

何もかも、分かっている瞳だった。


「そんなの、何もっ」

「逃げるな」

「――」

「ちゃんと、自分と向き合え」


強い言葉が、弱い私を飲み込んでいく。

耐えきれず震えている心が、彼の手によって引きずり出される。


その瞳を見て、やっぱりこの人は何でもお見通しかと思う。

やっぱり、と思う。


そうと分かった瞬間、施錠していた心がゆっくりと開いていく。

心の奥に鍵をして閉じ込めてきた気持ちが、一気に溢れ出す。

ずっと心の中で叫んでいた言葉が溢れ出す。

瞼にしがみついていた涙が、頬を伝った。




「――…1人にしないで」