突然名前を呼ばれて、え? と思う。

反射的に声のした方に振り返った。

だけど、振り返った先に見えたものに、時間が止まる。

浮かべていた笑顔が張り付いて、石のように固まった。


言葉が落ちない。

思考回路が追い付かない。


どうしてここに?

どうして、今?


グルグルと訳の分からない感情が渦を巻いて、私を地面に縫い付ける。

そんな私を見て、目の前の女性は、はにかんだ笑顔を浮かべた。


「瑠香……だよね? ――久しぶり」


そう言って、駆け寄ってきた女性。

そして、その後ろには小さな子供を抱っこした男の人。

男の、人。


見たくなんてないのに、施錠されたように目が離せない。

呼吸が一気に浅くなって、息が出来なくなる。


思い出したくもない思い出が、フラッシュバックのように蘇る。

幸せだった日々と、消し去りたい日々が怒涛のように。


「――……久し、ぶり」


目の前に現れたのは、私を裏切った2人だった。