初めは触れるだけのキスだったのに、そのうち深く私の口内で動きだした舌。

何度も角度を変えて、口内を犯していく。

相も変わらず両腕を壁に押し当てて、私を逃がさないように立っている純。

そんな事しなくても逃げないのに。


しばらくして、クチュっと水気の帯びた音と共に唇が離れた。

ゆっくりと長い睫毛を上げた純と目が合う。

加虐精神を刺激された彼は、変わらず無表情の私を見て、面白い、と小さく呟いて不敵に笑った。


「本当、もえる。――これ、俺の番号。連絡待ってる」


そう言って私のスーツのポケットに名刺を差し込んだ彼は、スタスタと席に帰って行った。


「はぁ……」


思わず深い溜息が出る。

せっかく口紅直したのに、落ちてしまった。


直して来よう。

そう思って、またお手洗いの方に向かおうと踵を返すと。