そのまま茜色の世界を2人並んで歩く。
そして、私の部屋の玄関前に着いた瞬間、掴んでいた手が離れた。
「何かあったら電話しろ。何時でも構わないから」
「ありがとうございます……」
「あぁ。じゃ、俺は仕事に戻る」
そう言って、櫻井さんはまた来た道を戻って行った。
ふと外を見れば、もう夕日も沈んで夕方と夜の間の時間。
綺麗なグラデーションになっている空を見て、少し心が落ち着いた。
部屋に入って、聞きなれたエンジン音を聞いてベランダに出ると、櫻井さんの黒い車が来た道を引き返していった。
その姿をぼんやりと見つめる。
本当、筋金入りの世話焼きだ。
でも、今はそれが少し嬉しかった。
助けられたのは事実だから――。