「とても醜くて自分ではどうしようもできない”こころ”を持ってしまったの」
奏多は目を見開いた。
「おかげでときどき暖かくなったり、締め付けられるように苦しくなったりするの。忙しないでしょう、でもね」
視界がぼんやりとして、前が見えなくなる。それは今にも溢れだしそうで。
「不思議なくらいに、いとおしいの」
陶器のような肌を、一筋の涙が滑り落ちた。
「すき、」
奏多くんがーーそう言い終えないうちに視界は真っ暗になった。
耳の側で打ちつけるのは自分のものよりも低くて、早い鼓動。
いつか触れた彼の高い体温。
彼に抱き締められている。そう悟ってシャツの裾を掴むと、彼は腕の力を強めた。
背中に両腕を這わせれば『待ちくたびれたよ』と囁かれた。
それが、答えだと思った。