奏多が同じクラスから出てきた女子に、声を掛けられていた。
賑やかな休み時間の廊下。
ふと、セミロングが艶やかな彼女に耳打ちされて。
それから奏多は笑った。心底楽しそうに。
ごった返した生徒に紛れて、楽しそうに笑っていた。
ピントを合わせて切り取った風景が、七菜子の両の目には、やけに鮮やかに見えた。
「七菜子、遅れるよ」
先を急ぐ友達の声で七菜子は我に帰る。
七菜子は後ろ髪を引かれる思いで、友達の元へ急いだ。
(――この気持ちは、なに)
黒い感情。だけど、生まれつきのひねくれた性格とはちょっと違う。
それよりもっと恐ろしいこころ。
――この気持ちは、なに?