「何これ」
机の中に、紙が入ってる。
その内容は
×〇×〇×〇×〇×〇×〇×
風間蘭さん
好きです
放課後、屋上で待ってます
K・S
×〇×〇×〇×〇×〇×〇×
K・S?
あたしの周りに、イニシャルがK・Sの人っていたっけ?
思い付くのは、たった一人。
柴田克哉。
地味で大人しいから、こんなことはしなさそう。
でも意外と柴田だったり…。
放課後までの、柴田の行動見てみよっかな。
面白半分で行動をみることしたあたし。
その行動があたしの今後の人生を大きく変えるなんて、このときは思ってもみなかった。
1時間目・国語
授業中の柴田の態度は、たいしていつもと変わらない。
実は柴田の席は、あたしの隣だったりする。
柴田があたしを好きなんて、絶対ありえない。
普通好きな人が隣にいたら、緊張するもんじゃないの?
恋したことないからわからないけど。
2時間目・数学
中学の応用問題なんだけど、全然わからない。
だって数学、苦手ですから。
柴田は解き終わったみたいで、机にうつ伏せになって寝てる。
さすがガリ勉地味男くん。
「柴田。この問題、教えて?」
柴田の肩をポンと叩いた。
「ん?…風間、どの問題?」
起きてたみたい。
眠たそうな柴田は、何か可愛い。
って、あたしは何考えてるんだ!
「この問題は…」
柴田が説明してくれてるけど、集中できない。
それは何でかって?
柴田との距離が、近すぎるから。
全然、集中できないよ…。
「風間、わかった?」
「うん。…あ、ありがとね」
「どういたしまして」
そう言って柴田は、笑った。
多分この笑顔は、誰も見たことないと思う。
正直、その笑顔にキュンとしてるあたしがいる。
だってね。
長い前髪の間から見えた黒い瞳が、すごく綺麗だったから。
闇がない感じだから。
「いきなりで悪いんだけど…。
前髪切ったら、柴田格好いいと思うよ」
あたしがそう言うと、柴田は顔を赤くした。
3時間目・日本史
これもまた、わからない。
ちんぷんかんぷん。
柴田はまたまた寝てる。
一体、何時に寝てるんだろ。
この時間は、これと言って何も起こらなかった。
4時間目・体育
今日は男女両方、バスケットボール。
あたしは運動音痴だから、いつも足手まといになる。
みんなそれを知ってるから、あたしにパスはしない。
何か寂しいよ。
今考えてみると、あたしに取り柄なんか一個もない。
こんなあたしを、誰が好きになるんだろ。
顔は普通だし、体型も普通だし。胸は小さい方だけどね。
勉強はできないし、運動音痴だし。
本当にいいとこなんて、1つもない。
はぁ…。
「蘭、危ない!」
何が危ないのかと思い上を向くと、バスケットボールがあたしの元へ飛んできてる。
突然のことで、身動きができなくなってしまったあたし。
このままだと、頭直撃だよ…。