赤に、黄色に山は色付く。
通る人たちは皆、口々に綺麗だと言う。
緑のままの、細く尖った葉たちが羨ましそうに見た。

『きれいだって』
『美しいだって』
『素敵だって』
通る人々が、赤や黄色の葉を見て言った言葉を繰り返す。

針葉樹に、一羽のスズメがとまった。
『風の強い日、あなたたちのおかげで休めるわ』
スズメの言葉に、針葉樹の葉は口々に言ってた。
『きれいじゃない』
『美しくない』
『素敵じゃない』

やがて、雪が降った。
あれほど人を惹きつけた色は、いつの間にか、茶色いぼろぼろのものになった。
雪の白さが、茶色いはがちらほら残る木を、更にみすぼらしく見せた。

針葉樹には雪がのり、その姿を飾った。
『きれいだね』
『美しくね』
『素敵だね』
針葉樹の葉は、嬉しくなり、自分たちを誉めた。

針葉樹の枝で休んでいたスズメが飛んだ。
『さようなら』
針葉樹の葉は、それに気づかなかった。
斧を持った人間が、針葉樹を切り倒した。
針葉樹は、暖かい暖炉の前で更に飾られた。

目の前で沢山の人たちが自分たちを誉める。

何日かして、だんだん苦しくなってきた。
『どうしてだろう』
『何故だろう』
『苦しいね』
針葉樹の葉は不安になった。
そんなある日、葉は全て削がれ、バラバラにされた木は順番に火にくべられていった。

秋が来て、また赤や黄色に色付く山。
人は言う。
『きれいだね』
『美しいね』
『素敵だね』