「どうしよう先輩!俺、生まれてまだ15年とちょっとしか経ってないのに、もうお先真っ暗ッスよ!理不尽過ぎやしませんか!?俺ってそんなにダメな奴なんスか!?」
「別に駄目ってわけじゃ……というか解雇宣言ってどういうこと?社長がそう言った?」
智昭はあくまで冷静に、そして言い聞かせるように問い質す。
「そうッス。社長が言ったんスよ。今月の成績も最下位だったらクビだって」
「マジか…」
「強硬手段に出るって言ってたけど、こんな事になるなんて…!そりゃこの前の依頼人はケチなくせして、やたらと注文が多かったんで、二股してるのをネタに揺すったりしましたけど」
「なんてことしてんの」
「もう俺の人生終わった。これから路頭という名の人生に迷うんスよ…」
「こらこら。まだ決まったわけじゃないでしょうが」
嘆く瀬々を智昭は宥めながら諭す。
それでも瀬々の嘆きは止まらず、ついには机に突っ伏してしまった。
「今まで散々、胡散臭いだの性格悪いだの言われて、ちょいちょい傷付いて涙が枕を濡らす日だってあったッス。それでも自分に正直に生きてきたんスよ。その代わり、誰にも文句言わせないほど仕事も一生懸命してきたのに、こんな仕打ち……もうありのままの俺を受け入れてくれる人なんていないんだ」
「そんな大袈裟な。とりあえず最下位から脱け出せばいいんだから、頑張ろうよ」
励ますがデスクに突っ伏したままの瀬々から反応は無かった。
彼等が勤めている藍猫は、数多に存在する情報屋の中で約五十年と長い歴史を持ち、見合った対価を払えば確実な情報を必ず提供してくれるとして、異能社会において超一流と評されている。
だがそんな世間の評価とは裏腹に、他の一流情報屋に比べ支店もなく、社員も八名と極少数で地味である。
しかし超一流とだけあって依頼の数は山ほどあり、一人が受け持つ仕事は少なくとも二桁は常に超えていて、手が回らない状況に陥るなどは珍しくない。
そんな状況が半永続的に続いている中で、瀬々に告げられた解雇宣言は、彼にとって人生の瀬戸際に立たされるのと同時に、藍猫にとっても痛手であるはずだ。
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