「それが僕たちの仕事なんだよ」

「分かってます。そんなことくらい。俺が言いたいのは、情報屋と依頼人はあくまで対等であると言うことッスよ」


瀬々はそうはっきりと答えながら、男が先程デスクに置いた報告書を手に取る。
数枚捲って、自分のページを開いて見てみる。
達成度、貢献度ともに高評価を受けているものの、依頼人評価だけは最低評価だった。
コメント覧には冷たい、配慮が足りない、態度が悪い、横暴などと散々に書かれている。


「前から思いやしたけど、随分な言われようッスね。笑っちゃうほどに」

「…本当に自覚ある?」

「人並みには。だからって直しませんけど」


自分の評価を一通り軽く読み終わると、報告書を静かにデスクに戻した。
瀬々は落胆もせず、変わらずに笑みを浮かべたままだった。


「社長の言ってる事は分かってるつもりッス。でも俺には俺のやり方がある。それを赤の他人にああだこうだ言われたところで、痛くも痒くもないんスよ」


そもそも自分の意志を曲げてまで、相手に遜ることに意味があるとは思わない。
時には妥協も必要と聞くが、瀬々にとってそれは諦めに等しかった。


「あのね悠くん、自分なりのポリシーを持つのはいいんだけど、情報屋も一応商売だからね?キミ一人がツンケンしてても――」

「俺は別にツンケンしてないし、ツンデレでもツンツンデレツンでもないッスよ。ただ正直に生きてるだけッスから。あ、でも強いていうなら、歪みに歪んだひねくれ者かもッスね」


ひねくれ者。
そう最初に言ったのは誰だったのか。
当初は自分のどこが。などと疑問に思っていたが、今では己の口から進んで言うほど自分の代名詞になっている。


「…要するに、キミはあくまで態度を改めるつもりはないということだね?」

「ええ。自分で自分を否定する事したくないんで」


瀬々は自信ありげに堂々と答えて頷く。
すると呆れの色を浮かべていた社長の表情が一転し、険しものへと変わる。


「なら仕方ない。ここは心を鬼にして、宣告させてもらうよ」


その直後。
社長から告げたれた言葉を機に、瀬々は唖然と驚愕を含んだまま窮境に陥ることになる。


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