「それなら良かった。でも何で桐島さんのことを?」
「昨日店に来たんスよ。依頼人じゃなかったんスけど、ちょい気になって」
「そうなんだ。今度ジョエル達にも聞いてみよっか?」
「助かりやす」
それから数分後。
瀬々とあかねは調停局に着いた。
三階建ての建物で、外観はある程度年数が経っているのか、やや古びていた。
中へ入ると局員の姿しかなく、人の気配が乏しく寂れた雰囲気を漂わせていた。
「あんまいないね」
「今日は土曜日ッスからね。休みの部署がいくつかあったような」
「瀬々はどこ行くの?」
「一般対策部ッス」
「あ、兄貴のとこか。着いてってもいい?」
「いいッスよ」
本来なら情報漏洩などを危惧して、仕事に部外者を付き合わせたりはしないが、あかねはその辺りの分別をしっかりと心得ているので、瀬々は承諾する。
「でも大丈夫なんスか?呼ばれてるんスよね?」
「そうだけど、時間まで余裕あるから」
そう言ってあかねは瀬々の後に続く。
目的の場所に向かうが、すれ違うのは相変わらず局員ばかりで、人の少なさを再度感じた。
調停局とは、元は異能者に理解を示し共に生きることを望んだ一般人達の活動が原点であり、時間とともにそれは大規模なものとなり、独立した組織にまで成長し今に至る。
現在でも異能者と一般人双方の共存という理念を掲げ、未だ反目している両者の間に入り、互いに理解を促す活動をしており、まさに彼らの仲介役を担っている。
「あかねっちのお兄さん……薊さんは一般対策部に勤めてるんスよね」
「うん。最近知ったけどね」
「先輩繋がりでその部署に知り合い多いんスけど、薊さんには会ったことないんスよ」
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