「でもその結果が肝心なのは分かってる。いくら実力があっても、認められなければ意味がないってことぐらい」

「瀬々くん……」

「だから何とかしてみせやす。それはそうと、今日は珍しいお客が来たんスよ」

「珍しい?」


一方的に話を切り上げ話題を変えると、未夜は首を傾げる。


「なんと!あの桐島の跡取り息子ッスよ!」

「桐島って……七華の?」

「そッス!友達の付き添いで来たんスけど、物腰柔らかい金髪碧眼のイケメンで、リアル王子様って感じでした!」


陽一の容姿を思い出しながら揚々と話していると、未夜は優しく微笑んだ。


「瀬々くんってすごいよね」

「何がッスか?」

「色々な人と出会ってて。私なんて七家や五指とかの大物に、一度も会ったことないもの」

「偶然じゃないッスか?つっても俺も会ったことあるの、ほんの一部ですし」

「そっか。でも王子様かぁ……いいな。私も見てみたかったかも」

「依頼引き受けたんで、また来ると思いやす。そん時、未夜さんにも教えやすね!」

「うん。ありがとう」


未夜が頷きながら微笑むと、事務所の方から賑やかな音が響いた。
耳をすませてみると、智昭クロードの声と、それらに混じって誰かの声が微かに聞こえた。


「なんスかね?」

「さぁ……あ、テオが戻ってきたのかな?」

「あーなる……ってヤバッ!菓子出しっぱなし!食われる!」


慌てながら事務所に走っていく瀬々。
未夜はその背中を見送りながら、一人佇む。


「やっぱり凄いな。瀬々くんは……」


頬をほんのり朱く染めながら、誰もいなくなった休憩所でぽつりと呟いた。


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