「ああ、そうだな。瀬々やテオに比べれば断然」


はっきりと肯定するものの、クロードの表情は険しさを増す。


「だが気を遣っているのか萎縮しているのか、自分の意思をはっきり出さない。というより、あのあまりの自信の無さはどうしようもない」

「あー……なんとなく分かるかも。クロードちゃんの顔怖いもんね。まるで般若」

「なんだと?」

「冗談だよ」


軽く笑って流す智昭だが、クロードの仏頂面に険しさは更に増していく。


「もう少し優しく接してあげたら?厳し過ぎるのもかえって良くないよ」

「分かっている。ねねさんにも言われて、言動に気を遣って、なるべく笑顔で接している」

「へぇ…笑顔、ね」

「しかし未夜はいつも引きつった顔をする。あの年頃の娘はよく分からない」

「……クロードちゃんさぁ」


悩ましげなクロードを見つつ、間を置きながら智昭は口を開く。


「ちょっと笑ってみ?」

「は?何故」

「ほんのちょっとでいいから」


智昭の提案の意図を掴めないままクロードは渋々、笑顔を作る。
すると智昭はどこか納得したような表情で深々と頷いた。


「あー……うん。やっぱりそうだよね。ははは」

「?」

「これは酷い。そりゃ未夜ちゃんもそうなるわ」

「何を言っている?」

「そのままの意味だよ」

「だからどういう意味だ?」


問い掛けは続くものの、智昭は一人笑って納得するだけで、それ以上は答えることはなかった。


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