戸松 某喫茶店
藍猫を後にした陽一と洋子は、プラティアから戸松へ出ると、辺りを気を配りながら小さい喫茶店へと入った。
「怪しまれはしたけど、とりあえず事は運びそうだね。良かった」
「陽一がいてくれたから。私一人じゃ断られてた」
「そんな事ないさ。洋子だってきちんと答えてたよ」
陽一は微笑みながらそう答えた。
優しい翡翠の瞳に、僅かに揺れる金髪。
洋子は目の前にいる彼を、自身の瞳でしっかりと捉える。
――陽一は優しい。
――どんな時でも
――私の味方でいてくれる。
――だけど……。
「この調子できっと上手くいくよ」
「うん。そうだといいんだけど……」
陽一の励ましの言葉でさえ、洋子の気は晴れることなくむしろ気が重くなる。
「大丈夫さ。洋子が心配することは何一つないから」
「でも――」
「俺のことは気にしないで。適当に誤魔化せるし」
「陽一……」
「洋子は自分と、あの人の事だけ考えてればいい」
「…………」
断言され思わず言葉を無くしてしまう。
俯く洋子に、陽一はまた微笑みかけると立ち上がった。
「怪しまれない内に帰るよ。定期的に会いに行くつもりだから、おばさんによろしく伝えておいて」
「…うん。陽一も気をつけて」
「ありがとう。じゃあまたね」
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