「否定はしないけど、そこまでチョロくないからね。あの人が別格なの。恐ろしいほどハイスペックだから」


どこか遠い目をしながら答える智昭に、瀬々は軽く笑う。


「分かってやすよ。となるとやっぱ、あかねっちは凄いんスよね」


脳裏に友人を思い浮かべながら、瀬々は手を動かす。


「その子って、この前話題になったオルディネの新リーデルだよね。今度会わせてよ」

「いいッスけど、アーネストさんに目を付けられますよ」

「なにそれ怖い」

「それだけの存在なんスよ。んで花村さんの件はどうするんすか?」

「もちろん、引き受けたからにはやりますよっと。とりあえず担当決めなきゃなぁ……誰にしよ」


智昭の呟きに、瀬々は目を丸くする。


「先輩が担当するんじゃないんスか?」

「いやぁ……よく考えたら、今引き受けてる依頼の数的に厳しくて」

「はぁ」


――じゃあ何で引き受けたんスか。
と思っても口には出さず、瀬々は適当に相槌を打つ。


「花村さんは怖がりっぽいから、クロードやテオくんは無理かな。不器用だし子供だし。未夜ちゃんかねねさんなら大丈夫そうかな」

「あ、未夜さんと多分同い年だと思いやすよ。桐島坊ちゃんが、俺より二つ年上って言ってたし」

「なら未夜ちゃんにしよっか。性格も似てそうだし、気が合うかも」

「そッスね」


同意して頷きながら、瀬々は再び自分の仕事に取り掛かろうとする。


「んーでもやっぱなぁ……よし決めた。間を取って瀬々ちゃんにする」

「りょーかー………は?」

「よろしくねー」

「ちょっと待って下さい。嫌ッスよ絶対」


気軽く言う智昭に、瀬々はすかさず反論する。


「何で俺なんスか。間なんか取ってないし、おかしいでしょ」

「おかしくないし、どこも異常はありませんっと」

「ありまくりッス。何で俺が人捜しなんかしなきゃならないんスか。他の仕事でいっぱいッス」


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