細々とした声で衝撃的な事実を告げられ、瀬々は唖然とする。

――ちょ、知らないって。
――まぁ写真あるだけマシ?
――というかこれ多分
――調査っていうか人探し。
――スリルない。
――めんどくさそー。


「……二、三お聞きしますが、この方と会ったことは?」

「あります。小さい頃お世話になってて……」


――お世話になってたのに
――名前を知らないって。
――なんか怪し。


「ちなみに、最後に会ったのは?」

「えっと……確か12年くらい前かと」


――思ったより結構前。
――なら名前を覚えてなくても
――仕方ないか?
――んーでも引っ掛かる。

胸のくすぶりを口にすることもなく、瀬々は正面に座る洋子を見る。
智昭の質疑にはきちんと答えているが、その表情は対面した時と変わらず警戒を含んだままだった。
まるで巣から顔を出しては隠れ、こちらを伺っているリスのようだ。
その様子をしばらく見ていると、視線に気付いた洋子と目が合う。
だがすぐに逸らされてしまった。


「――となると、手掛かりはこの写真のみですか」


そう呟いて、智昭は思案する。
それもそのはずだ。
僅かな手掛かりで情報を仕入れることは可能である。
実際過去の依頼の中にも、そのような条件で承ったものは少なくない。
しかしそれでも名前など対象についての最低限の情報はあったのだ。
またあまりに情報が乏しいと、当然ながらそれ以上の労力も時間も有する。
既に複数の依頼を受け持ち、一つの依頼に重点を置けない智昭からすれば、難しいところだろう。

――先輩どうするんスかねぇ。
――俺なら即断るけど。



「…どのくらい期限を頂けます?」

「き、期間ですか?えっと……は、早くお願いしたいです」

「そうですか……」


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