「歳は?」
「16です」
「俺の2コ下だ。ってことは高一?」
「そうですよ」
「学生なのに働いてるなんて凄いね」
「ありがとうございます。自分にはこの仕事しかないと思ってますんで」
「おおー」
瀬々が笑顔でそう答えれば、少年は思わず感嘆の声を零した。
彼は自分より年下なはずなのに、既に将来を見据えて前に進んでいる。
自ら動くことすらなく、ただ従うままに生きている自分とは大違いだとぼんやりとだが、少年は密かに思った。
「どうかしました?」
視線を感じたのか、瀬々がこちらを伺うように尋ねてきた。
「あ、えーっと……まだ名前言ってなかったと思って。俺は桐島陽一。よろしく」
「は、花村洋子です。よ、よろしくお願いします…」
誤魔化すように自己紹介をすれば、隣にいた洋子もまた真似するように挨拶をする。
瀬々を警戒しているのか、表情は相変わらず堅く、不安そうなままだった。
「はい、こちらこそ。宜しくお願い致しますね。桐島さん、花村さん」
当の瀬々は特に気にする様子もないのか、変わらない笑顔を向けていた。
「お二人はお知り合いですか?」
「ああ、うん。友達なんだ」
「そうでしたか。どうりで仲が良く見えたわけです」
軽く言葉を交わすと、瀬々は一歩下がりドアの方へと歩み寄る。
「担当の様子を見て参ります。少々お待ち下さい」
頭を下げて軽く一礼すると、瀬々は颯爽と部屋から出て行った。
足音が遠退くと、残された陽一と洋子は互いに顔を見合わせる。
「学生でも働けるんだな」
「私より年下なのに凄い…」
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