『よ……、ずみ、』
まきが起きていなくて良かった。この子まで否定されたことを、聞かれなくて、良かった。
嗚呼、本当に、
『ッ――――――…』
千歳が涙を流した瞬間、目の前にいた影が飛び出して鬼灯のほうへ。
目で終えぬ速さで刀を振り下ろす。
が、鬼灯が何かを呟いたと同時にその身体が畳に吹き飛んだ。
「……った」
『おーおー紅、無様だなぁ』
「お前……」
直ぐに猫のようなしなやかな動きで起き上がるその人は、不思議そうな声音で呟きをこぼし、先程までの戦闘とは対照的に子供のように首を傾げる。
年齢不詳、そんな言葉が一同の頭に浮かんだことだろう。
鬼灯は紅という人物の表情を的確に読み、得意げに言った。
『まきの力を貰ったんだよ』
未だ動かぬ冷たい子供に視線が集まり、だが直ぐに飛ばされた人物は眉根を寄せた。
「……力…?そうか…、妖力か」
『そうだ。さすが俺の子、使えるねぇ』
「……心底くずだなお前は」
『褒めんなよ、そそるだろ』
「気色の悪い男め」
何が起こったかは分からないが、ものの怪である鬼灯と千歳の間に生まれたまきが何等かの力を有していたのだということか?
分からない、でも、それが鬼灯に渡ったのだというのは理解出来た。