『まきッ…!や、やめて、離せっ…まき!!!!鬼灯様!鬼灯様!!!!』


やめてくれ、大事な我が子なのだ、殺すならば私にしてくれ、まき、まき、まきまきまきまきまきああああああああああああああああああああああああああああああ―――!!





『……そら、きた』


千歳の絶叫が響く室内で、まるでそれが聞こえていないような声音で鬼灯が呟く。

するとまきの喉元に突き立てていた腕に、するすると呪文のような文字の羅列が肌を滑るように刻まれていく。



まるで見えぬ糸が巻きつくように、螺旋を描き刻まれていく様は息を呑むような光景。




そして。

『終わりか、よし』

ずん、と鈍い音がしたと思うと抜かれた腕。



容赦なくまきの身体は宙から投げ捨てられて畳に叩き付けられる。
身体が壊れるのではと思うほど暴れる千歳鬱陶しそうに見ていた女は、用が済んだと見越したのか解放してやる。


まきに駆け寄った千歳は、矮躯を抱き上げ嗚咽交じりに名を呼んで、そこで驚愕した。




『……なんで、喉……』


―――傷一つない真っ新な肌は、以前と変わったところが見受けられない。




そんな二人なんか目に入らぬように、鬼灯たちは嬉々として会話をしている。



『みろ、どうだ?綺麗じゃねえか?』

腕をまくり、その右腕に刻まれた刺青のようなそれを見せつける鬼灯。白い着物の男女も何時の間にか傍に寄り、それをまじまじと見つめた。



『やぁだ鬼灯、腕が台無しじゃないか』

『色男が酷いもんだ』