千歳の言葉に、一瞬の沈黙。
だがその後、場違いな笑い声が響き渡ることとなった。
身を曲げて声を出して笑う女、別の方向で例の男も豪快に笑い声をあげていた。
なんだ、何もおかしいことは言っていない。千歳の背筋は冷たくなるばかり。
『面白いこと云うねぇ?』
『嗚呼、中々嫌いじゃない』
『あらやだ惚れたのぉ?』
『馬鹿云うんじゃねえ』
会話に取り残されながらも自分が馬鹿にされているということは理解した。
ものの怪、そう罵ったはずなのにこんなにも愉快に嗤うのは何故か?怖い、なんと怖いことか。
『さァて、それじゃあ……』
女の声に顔を上げた瞬間、眼前にあったのは血の色をした眼。
蛇が首をもたげるように、吐き気を誘う笑みを浮かべ舌なめずり。
『次は、アンタさ』
『ッ』