問題は家庭内にとどまらなかった。
心配した同僚が、夫へ連絡し、あのシートの勧誘を受けたという電話が来たのは、
ツナ子が自分の学校に出勤しているときだった。
飛び降りた生徒は意識を回復するもいじめっ子諸共それぞれ転校、それをきっかけに担任教師側が不登校であるという事も。
そして、吉川先生の夫だという事も、周りは認識していた。
肩身が狭い時期だった。
職員室内の人の声、グランドから聞こえる部活をする生徒たちの気配、
近くの高架線から聞こえる車や、電車の音。
耳に入ってくる煩い程の音全てが、一気に遠のいた。
そして、背筋の冷えを伴ってゆっくりと返ってきた。
夫の部屋に入ったのは、その夜が久々だった。