旅館の裏側の段差に座り込む。
あたしの腕を掴んだままの巧。
「あの…ありがとう。手…」
「…あっ、わりぃ…。」
慌てて離された。はぁ……。
自由になった手でポケットからケータイを取り出すと、時刻は既に6時をまわっていた。
「ごめん、もう夕飯始まっちゃったね。巧関係ないのに…。」
「いや、良いけど…何があったんだ?」
「…何気なしに莉々にメール読んでもらったら…まさかの、土屋からの告白の相談のメール。
付き合って下さい!
はどう?て感じの…。莉々、最後まで見てなかったし。
あたしの気持ち知ってて笑ってたんでしょ!?って…。出て行った莉々、追いかけられなかった。」
情けないよね、といって空笑いしてみる。
難しい顔をしていた巧は、しばらく下を向いていたのに、不意にあたしを見た。