「まさかこんなところで会うとはね。」
「びっくりですね。」
にこやかに微笑むお兄さんに私も釣られて笑顔になる。
このお兄さん絶対マイナスイオン出てる。
案内されたテーブルには赤チェックのテディベアが座っていた。
「おい瑞希、どーいうことなんだよ。」
「この前バーで会ったんですよ。」
「お前がバーって似合わないな。」
「どーいう意味ですか。」
ピラリとメニューを広げる。
メニューにも可愛いテディベアのイラストが描いてあった。
ティラミスにアップルパイにチーズケーキ。
どれも美味しそうだ。
どれなしようかなー、と心踊らせてメニューを見ていたら、ふいに視線を感じた。
顔を上げる。
すると、傑先輩が私をじっと見つめてきていた。
「なんですか?」
「女って単純だなぁって思って。」
「傑先輩そんなんだからアリサちゃんにフられたんですよ。」
「違うあれはタイミングが悪かっただけだ。」
アップルパイにしようかなー、と手をあげる。
すぐにお兄さんがやってきてくれた。
品のいい所作は大人の余裕を感じさせる。
こーゆー人もいいなぁ、なんて思っていたら。
「……おいっ!」
突然傑先輩がバッと眉をつり上げた顔を見せた。
「なんでお前、俺がフられたこと知ってんだよ!?」
「女子の情報網舐めちゃいけませんよ。」
口を開けて呆然とした傑先輩の顔はなかなか笑えるものだった。