それから、どれくらい歩いたのだろう。
ずっとヒメのことを考えていたから、時間を見るのなんて忘れていた。
「…あ、駅着きましたね」
だから、本郷がとなり駅を指差した時は、また心臓が大きく跳ねた。
「…ここ?」
「そうです」
「…」
ここで、俺はヒメと待ち合わせをしている。
「さっきの電話だと、そこのコンビニの裏で待つように言われたので、そっちに行っておきましょ」
「……」
駅でよく見る、ホームの下に建てられたコンビニ。
その裏は、あまり人が通らない陰になっており、確かに周りの人には気づかれづらいだろうなっていう印象。
ここで、俺たちはヒメを待つことにした。
「…暑いですね、なんか買ってきます?」
「いえ、いいです…」
…そんなに、喉に何かが通っていけるような状況でもないし。
「じゃあ俺、なんか買ってきていいですか?」
「どーぞ」
落ち着けず、返事もなあなあになってしまったが、本郷はペコリと頭を下げて、コンビニの中に入って行った。