いつもの様に一緒に下校。

まだ青が残るオレンジ色の空を背に、僕は幼馴染の女の子とゆっくりと歩いていた。

今日あった事や見つけた事、いろんな話をしながら二人で笑い合う。

家が隣な二人はもちろん帰り道も同じ。

けど、

今日はいつもと違う事が一つだけあった。



「あのね、・・・。」

ふと隣を歩く彼女の瞳が真面目な色に変わった。

彼女の少し変わった雰囲気に息を呑む。


「私、今日が最後なんだ。
遠くに引っ越す事になったの。」

「・・・・・・・は?」

自然と素っ頓狂な声が上がる。

「後は私が新しい家にこのまま帰れば終了。
ごめんね、しんみりしたくなくて言うの遅くなっちゃった。」

眉を下げ申し訳なさそうに笑う彼女に、呼び止めの言葉は通じないと悟る。

それは彼女がその事を受け入れていると瞳が、雰囲気がそうつげていたから。


なら、男の僕が女々しく言うのはいけない。


そうは思ったけれど、どうして受け止められるのか、離れても平気なのか、と言葉が口から出かけそうになる。


「・・・・・・・冗談じゃなくて?」

「まさかァ。こんな冗談は言わないよ?さすがに。」



胸の底の方から込み上げてくる気持ち。

これは何だろう。

悲しみか

悔しさか

損失感か


それとも・・・。




家に着くまであと信号一つに数メートル。

会えなくなるまでのカウントダウン。




ツンッ


突如、額に温かさを感じ、いつの間にかうつむいていた自分の顔を上げる。

その温かさは彼女の人差し指だと分かった。

「眉間に皺がよってるよ?」

彼女はまだ少し苦そうな笑顔を浮かべている。

「あのね、
そうやって’行かないで’って思ってくれてるのはすごく嬉しいけど、辛い別れにはしたくないよ。
絶対に会えなくなる訳じゃないしさ。

ねぇ笑ってよ。笑ってる顔の方が好きだよ?」


心の中がモヤモヤとして暗くなっていたのに、なぜだか薄暗い程度に収まっていた。

まだ、嫌だと思う気持ちは後を残しているけれど、好きな人の言葉は偉大らしい。




僕はありったけの笑顔を彼女に向けた。




彼女も嬉しそうな笑みをこぼした。







目の前に迫っていた信号。

僕は彼女の手を取り渡り始める。

嫌がる素振りは無く、逆に力が込められる手。

頬に熱がこもるのを感じ恥かしい気持ちが疼いたけど、頬を少し染めながらそっと微笑む彼女を見たらどうせもよくなった。




家の前でお互いの手は自然と離れた。




そして僕らは一つの約束をした。