信号が赤になると
「ちょっと失礼。」
とネクタイを緩めた。
そういえば龍馬さんはスーツ姿だった。
「今日はスーツ姿なんですね?」
「うん。惚れた?」
「惚れてないです。さっきまでお仕事だったんですか?」
「あぁ。午前中までな。」
「すみません。お忙しい中...」
「気にすんな。受験生の方が忙しいんだから。」
私が龍馬さんに済まないと思っていると
「受験、大丈夫なのか?」
と龍馬さんに訊かれた。
「センターはまずまずで、あとは大学入試ですね。」
「そうか。頑張れよ。」
「ありがとうございます」
暫くはたわい無い話をしていた。
ふと窓の外を見ると、バス停に先生によく似た人が立っていた。
無意識にその人を目で追っていると
「健気だねぇ〜」
とそれを見逃さなかった龍馬さん。
「え?」
振り返って龍馬さんを見る。
「バス停にいた人、似てたな。」
「そうですね。」
「アイツ止めて、俺にしたら?」
「龍馬さんに私は勿体無いです。」
「上手くかわすね〜」
そんなやり取りをしていると
...お店に着いた。