「あ、そうだ。」


私はふと思い出して、高橋に言った。


「消しゴム返してよ。」

「おお、はい。サンキュー。」

「どういたしまして~。」

そう言いながら、私は右手を出した。
消しゴムを渡す瞬間、高橋の顔が強張った。高橋は、消しゴムを私に渡さずに、

「なぁ、この消しゴム、俺以外のやつに貸した?」


「えっ…?貸してないよ?…だけど筆箱ごと、昨日は北野君が持ってたんだぁ~。私、間違えちゃったみたいでさ。でも、なんで?それは、私の消しゴムだよ?」


「いや、別に。」


と言って高橋は消しゴムをくれた。






今日の高橋、いつもと違う。


なんか変だ。


なにかあったのかな?




ペンケースに消しゴムをしまってから、その日の授業が終わるまでの間、私はずっとそのことだけ考えていた。