「はぁ。。。」
今日何度目かわからない溜息をつく。
星野くんにじゃない。
みおに。
休み時間の前にさかのぼる。


「みおー、次理科室だよねー?」
「うん。あー、梓衣ちょっといい?」
「なに?どーしたの?」
「実はさ、今日デート行くの。今から」
困ったようにあたしの耳にささやくみお。
「ふーん。そうなんだ。っていまからーっ!??」
思わず立ち上がってしまったあたしに、痛いほどのクラスメイトの視線が突き刺さる。
顔を真っ赤にし、もう一度席に座ってみおにきく。
「で、サボるの?」
「や、サボるってゆーか、なんてゆーか…」
と言葉を濁すみおに、サボるんでしょ?と冷たく言い放つ。
「・・・ごめん」

それで今に至る。
おかしいでしょ、今からデートだなんて。
うん、どう考えてもおかしい。
みおには五歳上の彼氏がいる。
あたしたちが16だから、多分彼は21。
大学の研究やらで忙しいとかでなかなか会えないみたいだけど・・・
「だからっていま?」
騒がしい廊下でひとりつぶやく。
はぁ。何回目だろう、もう。

ドンッッ

「わっ! いったぁ・・・」
そういいながら腰をさするあたしに
「ごめんっ、大丈夫?」
「だだだだだだだ、だいじょーぶですっ」
聞こえた声の先には、星野蓮くんがいた。
「ほんと? ごめん、俺、前見てなくて…」
「え、あ、いや、ほんと大丈夫ですっ!!すいませんでしたっ!!失礼します!」
そういって教科書を拾い、走ってしまった。