陸side
「行ってきまーす…」
誰もいない家に向かってそう言い、家を出た。
逆に誰かいたら挨拶なんてしねえけど。
今日は両親共に朝早くから仕事に行ったため、俺は朝から1人だ。
まあいない方が俺にとっては好都合だ、二人共夜も帰りが遅いし。
チカの高校は徒歩で行ける程度の距離だけど、俺の高校は距離が遠いため、電車に乗らなくちゃならない。
ちょっとだけ歩くと、前方
でどっかのカップルが抱き合っていた。
……こんな目立つとこですんなよ、こっちが気まずいっつーの。
足のスピードを緩め、はやく終わらねえかなと思っていたら、カップルはキスした。
そして、二人が顔を離した瞬間に見えたのは、幼なじみの顔。
「…………チカ……?」
チカだ、確かに、チカだった。
そして二人はまた、楽しそうに歩き始めた。
「あー……まじかよ……」
朝から、嫌なもん見ちまった…
前方を歩く二人に気付かれない程度の距離を取り、俺は駅に向かった。