~里音side~

 「~♪~♪~♪」
 鼻歌を歌っている私、伊藤里音は今日から高校一年生なんだ!
 今日はずっと憧れてた英修高校の入学式!!
 
 ここだけの話…私には好きな人がいるんだ。
 誰って聞かれても相手の名前は分からない…
 ただ…分かっている事は金髪の男の子だったって事だけ。
 でもね、その人は不良に絡まれていた私を助けてくれた
優しい人なの。
 …変かな?見ず知らずの人から助けられただけで恋をするなんて… 

 ―――ドンッ!
 「…きゃっ!」
 …私、誰かにぶつかった!?
 顔をあげてみると黒髪にピアスをした男の人が私を睨みつけていた。
 私は胸が少しドキッとした。
 
 …ってそんな事じゃなくて!
 今の、絶対そっちが悪いよね!?
 何で、こんなに人が集まるところで堂々と歩いてるのよ!!
ぶつかるに決まってるじゃない!
 何で私が睨まれなきゃいけないの!?
 意味分かんない!!
 
 「……おい、聞いてんのか?」
 
 「ひょへっ?」
 っ…何私はこんな間抜けな声出してんのよ~
「お前1年だよな?俺にぶつかっといてただ、謝るだけじゃないよな。」
 はぁ?何言ってるのよこいつ!いきなり俺さま発言しないでよ!
 ってかなんで、私が1年だって分かるの?
 あ、そっか…うちの学校はネクタイの色で学年区別させてるんだった。
 って、自問自答してる場合じゃないでしょ!
 私のばかー!!
 ん?俺様男のネクタイ………赤?
 「あんたも1年じゃない!!」
 そしたら、俺様男は「よく分かりましたね」って顔で私を見てきた。
 「あ、バレた。でも、ただ謝るわけじゃないよな?」

 パーンッ!
 うわ…
 ど、どうしよ…
 やってしまった。
 私は自分の手のひらを見つめ呆然とする。
 「…てー。やってくれんじゃん?」 
 私にぶたれた頬を押さえながら俺様男は言った。
 しかも、さっきより鋭い目で私を睨んできた。
 う…これはさすがにヤバいよね?
 「えっと…すみません。ちょっとやり過ぎました。じゃあ、私もう行くので!」
 私はそれだけを言って、校舎の中に逃げ込んで行った。