「お前に必要なのは俺だけ」
俺は何を口走ってるんだ?
こんなの俺じゃねぇーよ。
知ってる俺じゃ…ねぇ。
「稜ってば…どうかしたの?」
「別に……気にすんな」
「そう?じゃ絆創膏はこのままで」
気に食わない。
俺自身が自分の事をわかってないなんて。
笑えてくる。
「大丈夫かよ、稜」
「あぁー、俺変」
「バーカ、女慣れしてんだろ?」
「…まぁ」
「彩希だけはだめなんだな」
「…は?」
「記憶って案外いらねぇーよな」
なにを言い出すんだ?愛翔。
記憶は必要………。
「心のほうは覚えてる」
「頭イカれた?」
「うぜぇ…。ま、記憶はなくても彩希への気持ちは心がちゃんと覚えてたっつー事」
心……?
なに胡散臭いこと言ってんだ?
「はっきりしてんじゃん、稜」
「意味わかんねぇ」
はっきりしてる?
なにがだよ!
俺は自分がわかんなくて戸惑ってるっつーのに。
彩希への気持ちがわかんねぇ。
さぁちゃんは“特別”
じゃあ……彩希は?
それがわかんねぇーんだ。