レミングの自己犠牲なんて、よく言ったものだ。
本当は、自己犠牲なんかじゃない。

住みづらい環境から脱出しようと集団移動している最中に、偶然、崖があった。

偶然、落ちてしまっただけの話だ。


そもそも、自己犠牲の遺伝子なんて、存在自体が怪しいらしい。


この事実を聞いたとき、幼い俺は少なからず、がっかりした。


ただ、太一の過去を聞いて、自己犠牲なんて必要ないと、心から思った。

利己的遺伝子でもなんでもいいから、


自分を、犠牲になんてするな。