「しかし家に帰ると、太一はただ黙って、言うことを聞いているだけなんですよ。必要最小限の質問にだけ、応えて」


今と同じだ。


「その時から、人が見えていなかったんですか」

「いえ」


ふと、悲しそうに目を伏せた。


「その時は確かに、私の目を見ていました。ただ、様子が普通じゃないことは気づいていたんです。それを、当時の家内ににも言ったんですが…」


「……」

俺たち三人、息をのむ。

「家内は軽い調子で、
『ああ、あの子、最近そうやって遊んでるのよ。そのうちに飽きるでしょ』
そう言ったんです。私は家内の言葉を鵜呑みにしました」