ごくりと、唾を呑み込んだ。


「太一は、もうずっと前から、人が見えていなかったんでしょうね。私は、気づくのが遅すぎた」


しばしの沈黙が、流れる。


「私が異変に気づいたのは、太一が小学校に入学してからです。元々大人しい子でしたから、苛めにでもあっているんじゃないかって、心配したんですよ」


「苛め…」


「でも、違いました。偶然仕事が早く終わって、帰り際に太一を見かけたんですが、友達と楽しそうに遊んでいるんですよ。
驚きました。太一の無邪気な笑顔なんて、久々だったので」



俺も、驚いた。太一の無邪気な様子を、想像しただけで。