はっとしたように、男性は顔を上げる。

それからしばらくまた俯いていたが、

寂しそうに口を開いた。

「…そうですね」



駄目だ。


ここにいたら、この人殴る。


「帰ります」


なんとかその言葉だけを喉の奥から絞り出し、


泣いているみずきと、ただ黙って一点を見ている晃さんを置いて、その場を後にした。