公園のベンチで雨に当たっていると、
一人の男の人が、黒い傘をさして、近寄ってきた。



「お、ぼうず。そんなところで、なにやっとるんかね」


声の主を見上げた。


見ると、ごま塩の無精ひげをはやし、つぶらで穏やかな目には、丸眼鏡を懸けている。

4、50歳位のおじさんだった。


「…ほっとけよ」



意味もなく、そのおじさんを睨んだ。



「風邪、引くがね。お、ほれ、傘、貸してやるっけんに」


不思議な訛りの言葉でそう言って、おじさんは傘を俺の上にかざした。


「おめさん、家、どこらへんだ?早よ帰らんと、親御さん、心配するよぉ」


「うっせぇな、心配なんてしてねぇから、おっさん、早く帰れよ」