はっとした。 わかっていたが、わかっていなかった。 太一は、一度だって、自分の感情を出したことがない。 太一が 怒ったり、喜んだり、 悲しんだり、安心したり。 そんなこと、一度もなかったんじゃないか。 想像さえつかない。 食べろと言われて食べ、 座れと言われて座り、 寝ろと言われて寝る。 「太一…」