「お前、そんな体制で落ち着く?」 俺の問いには答えず、 じっと、こっちを見ているだけだった。 こんなのはさすがにもう慣れたので、構わず話しかける。 「お前、本って読んだことある?」 こくり、と頭を傾けた。 「へぇ、どんな本?」 「走れメロス」 この答えには、さすがに俺も驚いた。 返答を期待していなかったこともあるが、初めて、はっきりと声を聞いた。 小3とは思えない、色のない声だった。