ふと、太一が食べかけたスクランブルエッグが、スプーンから溢れて、こぼれた。


それについていたケチャップが、パジャマの上に跡をつけた。



「あちゃぁ、こぼしちゃったね」


みずきが、お絞りをとりに行った。




その時だった。


確かに、俺には聞こえた。

太一の声。

消え入りそうな細い音で、


「ごめんなさい」と。


ただ、驚くくらいに、その言葉の中に感情がなかった。


太一の口から発せられたのは、「ごめんなさい」という音だった。