森鴎外の小説に、
[雁]という作品がある。

その話には、岡田という人物が出てくる。

彼は下宿先で、その行動を見て時計代わりにされるほど、

また、もっている時計に合わせて、宿舎の時計を直されるほど、

行動にムラがないのだ。


今日は土曜だ。


そろそろこの家にも慣れてきて、休みの日でも早起きが苦じゃなくなっていた。



リビングで適当に寝転んで、雑誌を見る。



「ちょっとぉ、休みだからって寝転んでないで!邪魔ぁ」


千佳が、慌ただしく出かける支度をしながら、ぼやいた。


いつもと同じ、彼女なりのコミュニケーションだ。