「じゃあ、母親か」


おっちゃんが、ゆっくりとうなずく。

「あんな風になったのも、目が見えなくなったのも、原因は母親らしいって」



「子供を困らすのも、悩ませるのも、おかしくするのも、親には簡単にできる」


皮肉っぽく、言った。

その場に、皮肉を浴びせる対象はないのに。


「でももう、母親はいないんだろ。太一もそのうち、普通の子供になるさ」

投げやりに言った。


おっちゃんが、かぶりを振る。


「太一は、お母さんが大好きなんだろうよ」

とても悲しそうな顔だった。